林 基弘の
「至高の定位放射線治療を目指して」
こだわりの治療計画
「至高の治療計画」完遂を目指して

治療計画は定位放射線治療医にとって
まさに「真価と進化が問われる」
最もコアな作業行程であると言える

最終的には「辺縁線量域(ガンマナイフの場合、黄色の線で表示)」が腫瘍をしっかりと囲え、周囲正常脳神経に如何にかからずに計画できるか?によるが、実はこれではまだ至高とはとても言えない。作業行程において、数種類の球状照射野(アイソセンターと呼ぶ)を、最初に何処に配置し、次いでどのように配置して正確に腫瘍全体を照射していくのか?かつ周囲の脳神経を過照射より保護するために0.1-0.2mm単位で各アイソセンターを如何に外していくのか?顕微鏡下手術(マイクロサージェリー)にて培われた経験・技術・ノウハウに基づき、定位放射線治療適応疾患に対してどのような状況・病態に対しても納得のいく治療計画が立てられてこそ「至高」の治療計画と言える
定位放射線治療の特性
Gamma Knife
ガンマナイフ
元来「定位放射線手術」と呼ばれ、直径4, 8, 16mmの3種類の形状変更可能なアイソセンターで構成されている。顕微鏡下手術同等の繊細な治療が要求される場合には、フレーム固定にて0.1mmの精度の元で高精度照射治療(SRS: Stereotactic Radio Surgery)するのが基本である。

一方、アイコンもしくはエスプリという最新機種にてフレームレス(=マスク固定)にて寡分割照射(SRT: Stereotactic Radiation Therapy)も可能となり、サイバーナイフ同等以上の機能を有することとなった。一方で、照射精度は1.5-3.0mm程度とSRSに比し桁レベルの違いがあり、適応疾患は悪性腫瘍・AVMなどが主となる。テント上(=大脳レベル)の非良性腫瘍は好適応となるが、脳幹・各種脳神経症状のないテント下(=小脳脳幹レベル)非良性腫瘍に対してはまだ難しい印象がある。
ZAP-X
ザップエックス
最新脳定位放射線治療機器ZAP-Xでは独自の「自動ズレ補正システム」が搭載されたことにより、SRSのみならずSRTにおいても0.19mmの精度(フレーム固定と同等)で照射加療が可能となっている。

さらに、直径4, 5, 7.5,10, 12.5, 15, 20, 25mmの8種類とより多くのアイソセンターで構成されていること、かつ照射距離(照射装置からターゲットまでの距離)がガンマナイフ・サイバーナイフの約半分と格段に短く設計されていることから、周囲に漏れ出す低線量域(Radiation Penumbra)が非常に狭く急峻となり、とくに放射線障害を来たしやすい大きさのある腫瘍や周囲に脳神経など重要構造物が隣接している腫瘍(テント下非良性腫瘍など)に対してはより有効になっている。
Treatment Planning Systems
治療計画システム
ガンマナイフ・ZAP-X双方において共通で、事前に各疾患にて決められた撮像条件におけるMRIおよびCT画像のインストールを行う(必要に応じてブレインラボ社ソフトウエアをその前段階に用いる)。

デスクトップ上、軸位(頭を下から上に見上げた輪切り画像)、冠状断(頭を前から見た画像)、および矢状断(頭を横から見た画像)を同時に確認できるワークスペースにおいて、ターゲットや周囲正常構造物に対して3次元的に解剖学的状況を顕微鏡下手術のレベルで把握が可能。具体的に、造影T1像にて腫瘍や周囲血管の存在・形状を細部まで確認することを目的とし、T2像にて腫瘍周囲の正常脳における「浮腫」の存在と程度を把握する。テント下病変においてはFIESTAやCISSなどの3D Heavily T2像がさらに有効で、1mm程度の脳神経をも描出が可能で治療計画にかなり役立っている。  
「完治」ではなく「治癒」を目指す
治療計画を立て完遂していく上で、やはり最も大切なことは、目の前の患者さんの「恐怖」・「絶望」・「本音」・「したいこと」を外来でしっかりと傾聴してからその作成に臨むことであると考えている。一つの治療で、恐怖を「安心」へ、絶望を「希望」へ、したいことを「できること(実現)」へ変えていくこと、変わるための勇気に変えることができる治療こそ定位放射線治療なのである。目指すは「完治」ではなく「治癒」、つまり「治」して「癒」されること。失いかけた人生を、笑顔にして取り戻してあげることに尽きる。そのために治療計画完遂に妥協は許されない。

  最後に、このホームページの主幹とも言える「こだわりの治療計画」ページにおいて、代表6疾患に対する私の治療計画の真髄をここに余すことなく表現したい。内容・言語は専門医向け相当のレベルであり、一方で一般の方のみならず医学生・医療者にとってでさえ難解であろうということを意図として承知している。しかし、日々私自身どのように考え、どのように治療計画を実践しているのかを、後世に残す意味も含めて、ここに記述しておきたいと考え作り上げている。患者のこころと人生を背負う人間の息遣いと気概だけでも感じ取って頂ければ、それだけでも大きな意味があると自負している。
主な6疾患