腫瘍そのものの形状についても確認が必要。内耳道内(soft bone箇所)を広範に破壊して成長していくタイプか?そうではないのか?また、内耳道外進展し脳幹到達時に、脳幹をシンプルに圧迫していくタイプか?もしくは横に広がりあまり脳幹圧迫を来さないタイプなのか?などで腫瘍の硬さが推測できる。また、造影CISS/FIESTA画像にて、lower intensity lesionsが散在性に認められる場合、私たちはそれを“vascular tangle”と称し、腫瘍内栄養血管の豊富さを示している。ときには脳動静脈奇形のようにかなり血管血液に富んだ腫瘍もあるので注意を要する。
腫瘍発生地点が内耳道底側に近ければ、Koos 1のような小型腫瘍であっても強い蝸牛神経障害により難聴で発症し、一方でそれが内耳道入口部もしくは脳槽内側であればKoos 4のような大型腫瘍でも内耳道底における蝸牛神経損傷がさほどでないため意外に有効聴力維持症例が存在している。これらの確認作業は内耳道底における蝸牛神経保護要否の観点で、アイソセンター(球状照射野)の是非を決定づけるものになる。
主に単純CISS/FIESTA画像のcoronal viewにて、tumor tailとhorizontal barとの位置関係にて、上前庭神経鞘由来なのか?下前庭神経鞘由来なのか?大方診断可能となっている。上前庭神経鞘腫の場合は下図のごとく、horizontal barより下に位置するinferior vestibular grooveにcerebrospinal fluid(CSF/脳脊髄液)が介在することが確認でき、結果として顔面神経はシンプルに前方に偏移圧迫されていることがわかる。一方で、下前庭神経鞘腫の場合は下図のごとく、tumor tailがhorizontal barより下に位置するため、inferior vestibular grooveにおいてCSFの介在がなく、結果として顔面神経は前上方に偏移圧迫されていることがわかる。