学会・講演

初の男子高校生対象高大連携「暁星高校職業体験実習」報告

初の男子高校生対象高大連携「暁星高校職業体験実習」報告

脳神経外科学分野教授・林 基弘

昨今、医学部進学希望者が多いことで知られている都内私立暁星高校。実は私も41年前に同校を卒業しましたが、その時代は医学部志望というよりも、歌舞伎役者・香川照之君、文京区長・成澤廣修君、東京大学総合研究博物館教授・遠藤秀紀君、、、のように多種多様な職業に就く者が多く、むしろ自分はマイナーな存在であると感じていました。

そのような中、同校同窓会副会長・瀧川 功氏、および同校教務部長・上原裕之先生より、母校「職業体験実習」への協力と講演を依頼されたことがきっかけとなり、本学初の男子高校生対象高大連携事業として暁星高校「職業体験実習」を実施することになりました。

             私立・暁星高校正門

今回「職業体験実習」本学開催を決めるに際し、副学長・清水達也教授が大会長として主催された「第47回未来医学研究会大会」の中で、いかに若い世代に医療の大切さや素晴らしさを伝えていくか?というオープン・デイスカッションの場が自身大きなモチベーションとなりました。理事・多賀谷悦子教授からも、本学の今後の発展のために高大連携の重要性を強調されており、直接相談できたこともかなり心強く感じておりました。

さらに2015年に私が大会長を務めた第12回国際定位放射線治療学会学術大会(パシフィコ横浜)にて、横浜市と共同で市内中学高校生を対象とした「次世代育成事業」を同時開催させて頂いた経験があり、実際に国際学会会場に専用通訳付きで参加頂き、展示会場でも直接放射線治療機器に触れるなど多くの体験をしていただけるよう企画しました。そして、その参加者の中から見事に医学部進学を叶えた高校生がおり、まさに「鉄は熱いうちに打て」の実際版。物事への感受性が極めて高く、そして将来を具体的に考え始める時期にあたる高校生たちだからこそ、現場を体験頂く事こそ大きなモチベーションとなると確信していたことも大きなきっかけの一つでした。

        暁星高校2年生9名の戦士たち   

         外来エントランスにて

今回「職業体験実習」は11月14日に一日通してのプログラムとして、暁星高校2年生9名を対象として開催をさせて頂きました。朝8時に南館4階脳神経外科医局に集合。まず、医局症例検討カンファレンスに参加頂き、終了後に自己紹介。生徒すべてが医学部志望ではありましたが、なぜ医師になりたいのか?という質問に対して曖昧な答えが多い印象ででした。

          ガンマナイフ室にて

          わかまつ学級にて

次に皆スクラブに着替え白衣を身にまとい学内見学ツアー。外来センター見学後、ガンマナイフ室にて15歳AVM患者さんに対する実際の治療を見学。次いで引率者の藍原准教授が「わかまつ学級」を案内。そこで、小さな子たち、若い世代の子供たちの治療にかける想いとそれを支える医療者の意気込みを感じて頂けたものと考えています。その後、3班に分かれて手術室へ。消化器外科(本田五郎教授)・脳腫瘍外科(Hyper SCOT)(藍原康雄准教授)、定位機能脳神経外科(堀澤士朗助教)それぞれを2時間程度見学。「初めてヒトの脳を見た!」とその感動を口にした生徒もいたほど。

12時に医局カンファレンス室に戻り食事を摂りながら脳神経外科学(藍原康雄准教授)の講義。その後に基礎系として病理学(倉田 厚教授)、内科系として循環器病学(山口淳一教授)、外科系として消化器外科学(本田五郎教授)、そして全般系として救急医学(森 周介教授)に30分ずつのミニレクチャーを頂きました。それぞれの先生方の個性溢れる授業に私も魅了されたほど。生徒たちのハートはかなり鷲摑みされていたと感じています。

           ミニレクチャー(倉田教授)

          講師を囲んで記念撮影

 

そして、最後にTWins見学。最初のFATS(先端工学外科)では、Hyper SCOTと同仕様の手術シアターにて吉光喜太郎講師より白熱の授業。外科手術の魅力と医工学の進化を強く感じとっていたようです。そして、締めは清水達也教授による再生医療に関する医療の未来を強く感じる講義がなされました。心筋シートから培養肉に至るまで、一人の命を救ううのみならず、飢餓で苦しむ多くの人たちへの研究に興味津々でありました。

FATSにて(吉光講師) 

                 清水教授を囲んで

最後のアセスメントにて、生徒一人一人から感想を聞きました。子供たちのすべてが目を輝かせており、「外科医になりたい!」「こういう研究をしたい!」とかなりピンポイントに夢を語っていたのがとても印象的でした。一日を通して盛り沢山のプログラムではありましたが、やってみて私自身も本当に良い体験をさせて頂いたと、今回ご協力を頂きました先生方や職員の方々に感謝の意を表したく存じます。きっと、10年後女子医大に帰ってきて、それぞれが本学発展のために貢献してくれることでしょう。